個人事業主にとって業務委託の請求書は重要なの?項目ごとの書き方も解説
取引先に業務委託の請求書を作成する際に、どのような点に注意すればいいか悩んでいる方はいませんか。
取引先への請求処理や入金の確認などの煩雑な事務処理に時間を割かれ、本来の仕事に専念できないストレスを抱えている方もいるでしょう。
この記事では、業務委託の請求書に盛り込むべき項目や留意点、請求書の作成をより効率的に行う方法について解説しています。また、2023年10月1日から開始される「インボイス制度」の概略についても説明しています。
この記事を読めば、業務委託の効率的な請求事務処理が理解でき、フリーランスや個人事業主として取引先と円滑な請求支払いのやりとりができるようになるでしょう。
適切な請求書の作成・発行方法を身に付け、煩雑な請求事務処理を効率化しましょう。
目次
個人事業主にとって業務委託の請求書は重要
個人事業主・フリーランスにとって請求書は、業務委託を受けた労働の対価の支払いをしてもらうための重要な書類です。委託された業務が完了したら、取引先に対して請求書を発行することを忘れないようにしましょう。
請求書を作成するメリットとは?
請求書を作成することのメリットとして次の三点があげられます。
・取引先(請求先)に請求に対する入金処理を確実に実行してもらえる
・請求回収に関わるトラブルが発生した場合の確認がしやすくなる
・自分の口座の入金予定が把握でき、管理がしやすくなる
個人事業主として確定申告をする際には、発行した請求書控えが重要な証明書となります。請求書は5年間の保存義務があるため、取引先に送付した請求書とは別に本人用の控えを大切に保存するようにしましょう。
出典: No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
一般的な請求書の項目と書き方
業務委託の請求書には統一の書式はありませんが、請求に必須となる項目や基本的な記載方法を知っておくことは大切です。また、源泉徴収に関する記載などは、納税や確定申告にも影響するため個人事業主・フリーランスにとって重要な項目となります。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
請求書番号
請求書を管理する上で、取引先からの問い合わせ対応、あるいは入金の確認などが適切にできるように、全ての請求書に請求書番号を記載します。
請求書番号は自由に採番することができますが、請求書の管理がしやすいように、通し番号にしたり、発行日などの規則性のある数字と通し番号を組み合わせたりするといった工夫をすると良いでしょう。
請求書の宛先
取引先(請求先)となるクライアントの会社名・部署名・担当者名を記載します。業務のやり取りをしている部署と請求先が異なる会社もあるため注意が必要です。宛先が会社名・部署名の場合は”御中”を、請求先担当者の個人名であれば”様”をつけましょう。
発行日
会社によって違いがありますが、通常、請求書の発行日は請求書を作成した日ではなく、取引先(請求先)の請求の締め日に合わせるのが一般的です。
したがって取引を開始する際は、事前に取引先(請求先)に締め日と請求日の規定をよく確認し、再発行や再送付の手間がかからないようにしましょう。
発行者氏名
発行者氏名の欄には、自分自身(発行者)の氏名を記載します。個人事業主やフリーランスの場合は、個人名で構いませんが、屋号がある場合には屋号を記載します。
屋号とは個人事業主やフリーランスが使う商売上の名前のことです。商店を経営している方はお店の名前をそのまま屋号にしている場合が多いようです。税務署に提出した開業届けに屋号を記入した場合は、登録した屋号を記入すれば良いでしょう。
請求内容
請求内容には、請求の対象となる品目・単価・数量を記載しましょう。ライターやエンジニアのような業務の場合、具体的な商品名などがないため、品目は”業務委託費”と記載する方法が一般的です。
エンジニアの場合は、”システム設計費”や”システム開発費”といった、業務内容を記載しても構いません。
ただし、取引先(請求先)によっては、品目の記載内容を指定される場合もあります。初めて請求書を出す取引先には事前に確認しておくと、修正再発行などの事態を防ぐことができるでしょう。
消費税
請求対象の商品が消費税の課税対象の場合、消費税の金額を入力します。10%・8%の税区分も明確に記載しましょう。ただし年収が1,000万円以下の場合、免税事業者となるため請求書に消費税額を記載する必要はありません。
出典:消費税のしくみ|国税庁
支払い期日
取引先が請求金額を支払う予定日を記載します。未払いや支払い遅延などのトラブルを防ぐため、取引先の支払いスケジュールを確認した上で記載しましょう。
支払日が土日および祝日と重なっていた場合は前営業日と休み明けどちらになるのか、また、年末年始は特別ルールが設定されていることもあるため確認しておくと安心です。
振込先
振込先の銀行名と支店名、口座種別・口座番号・口座名義を記載します。また、振込手数料の負担について、請求者負担・支払者負担の2パターンが想定されます。
請求や支払いの段階になってトラブルにならないよう、手数料負担についても事前に取引先によく確認しておきましょう。
特記事項
特記事項や備考の欄は記載することが厳密に決まっているわけではありません。通常と支払い期日が変わる場合など、支払いに関して特別な条件があるときにはきちんと記載するようにしましょう。
請求書を作成する時に気を付けること
請求書の項目によって、特に注意が必要であったり、事前に取引先に確認したりするものなどもあります。よくある事例としては、法的には明確な決まりがないものの、取引先(請求先)が独自のルールを設けている場合などもあるため注意が必要です。
請求書作成にあたり、特に注意が必要な項目について解説します。
印鑑
請求書への印鑑の押印は法的には必須ではありませんが、請求書には印鑑を押すのが一般的で、主な理由は以下の二点でしょう。
・請求書の信頼性を高める
・請求書の改ざんを防止する
請求書への押印に一番適しているのは角印です。角印は会社の認印の位置づけで法的な効力はありませんが、一般的に請求書では多く使用されています。
請求書への使用に適していない印鑑は以下の三つです。
・丸印
・銀行印
・画像データの印
丸印は会社の実印としての意味合いもあり、銀行印は金融機関での手続き等に利用されます。大量に発行される請求書への使用は偽造や不正使用、印鑑の摩耗リスクにもつながることから適していません。
画像データの押印も法的には問題ありませんが、不可とする会社もあるため事前に確認しておくと安心です。
金額
請求金額の書き方としては”小計(税抜き)”と”消費税”、”税込みでの合計金額”を記載するのが一般的です。もし自分が源泉徴収対象者になっている場合は、源泉徴収額も内訳に記載します。
消費税額を明記すれば、取引先も内訳を把握しやすく、請求する側としても確定申告の記帳作業が楽になるでしょう。また、源泉徴収対象者の場合、消費税を分けて記載することにより、源泉徴収額が少なく済むメリットがあります。
出典: No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
消費税
請求書への消費税の記載については、他の項目以上に注意が必要です。自分自身が免税事業者であっても課税事業者との取引を行っている場合、取引先から区分記載請求書等の交付を求められる可能性があります。これは取引先が仕入税額控除を行う必要があるためです。
このようなケースでは、税率ごとに区分して合計した”税込み金額”の記載や、”軽減税率の対象品目であることがわかる記号”をつけるなどの細かい指定を受けることになります。
出典:消費税のしくみ/国税庁
源泉徴収税
個人事業主でも、一部の業務を行うと源泉徴収の対象となり、発注側の取引先に徴収と納税の義務が発生することがあります。したがって、まずは自分自身が取引先(請求先)の源泉徴収の対象になっているかを把握しておく必要があるため、分からなければ請求先に確認しましょう。
源泉徴収の対象になっている場合は、取引先に請求書への源泉徴収の記載要否を確認しましょう。
源泉徴収額は、自分に支払われる報酬金額をもとに算出されるものですが、請求者が計算した金額を請求書に記載して良いか否かは、取引先によって異なります。
出典: 税の情報・手続・用紙/国税庁
立替経費
取引先との仕事の都合上、本来クライアント側が負担すべき費用を立て替えて、商品を購入したり、出張を行ったりすることがあった際に注意する点は二つあります。
・立替経費として請求できるか
特に多い事例としては、業務の打ち合わせのために発生した交通費があげられます。打ち合わせの主旨やその打ち合わせを行うことになった経緯などにより、クライアントへの請求を断られる場合もあるため注意しましょう。
・立替経費の請求方法
立替経費を清算するためには、経費を立替えた側が「立替金請求書」を作成する必要があります。
取引先によって会社独自の書式があることが多いため、立替経費の請求方法や請求書の記載方法については、事前に取引先によく確認しましょう。
インボイス制度とは?
インボイス制度は、新しい仕入税額控除方式で、2023年10月1日から導入されます。仕入税額控除とは、取引段階で重複して税がかからないよう、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を控除することにより、税が累積しない仕組みのことです。
インボイス制度未対応の場合、取引先(請求先)にインボイスを交付できません。インボイスを入手できなかった取引先(請求先)は仕入税額控除ができないため、納付税額が大きく計算されることになります。
2023年10月からインボイス制度を導入するには、税務署への登録申請書の提出が必要です。
売り手である免税事業者がインボイス発行事業者にならなかった場合は、従来通り消費税区分が記載された請求書の交付をすれば問題ありません。
但し取引先(請求先)が課税事業者だった場合、自身は免税事業者であってもインボイス発行を求められる可能性があるため、取引先へ事前に確認しておきましょう。
請求書を簡単に作成する方法はあるの?
請求書の作成は単なる事務処理ではありません。個人事業主が収益をあげるために必須の金銭が絡む手続きのため、些細なミスであっても取引先との信頼関係に深刻な影響を及ぼすことさえあります。
しかし、請求業務に手間や時間がかかりすぎるのも問題でしょう。本来専念すべき業務に充てるべき時間が削られてしまうからです。なるべく手間と時間をかけずに請求書を適切に作成する方法にはどのようなものがあるか説明します。
クラウドサービスを利用する
請求書の作成をより効率的にする選択肢として、クラウド型のサービスを利用する方法があります。請求書の作成だけでなく、作成から送付までサポートしてもらえるサービスもあり、手間のかかる請求作業を一括して効率化できるメリットがあります。
個人事業主としては、本業以外の雑務にかかる時間は出来るだけ短縮し、本来の仕事に集中したいのが本音です。そのためにも、費用対効果を考慮した上でクラウドサービスの導入を検討してみましょう。
フォーマットを利用する
フォーマットを利用する場合は、たくさんのテンプレートが用意されているため、取引先の条件を満たし、自分の使いやすいものを選んで利用すると良いでしょう。
フォーマットを利用しなくても、アプリケーションソフトのテンプレートなど、無料で入手できるものも多くありますので、自分に合った使用感のテンプレートを探してみましょう。
業務委託の請求書の重要性や書き方を知っておこう
個人事業主およびフリーランスとして正しく請求書を作成する知識は、円滑な業務を行う上で必須です。
請求書を適切に発行することにより取引先・クライアントからの信頼も向上し、確実な入金を期待できるでしょう。
反対に、せっかく品質の高い業務を遂行し製品を提供していても、請求処理に不備が多く、取引先に度々余計な手間をかけるようだと、信用を失い取引に重大な影響を及ぼすこともあります。
請求書の適切な書き方を正しく理解し、取引先とのやりとりをスムーズに行いましょう。
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
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