主な非課税所得の種類とは?税金がかからない理由についても紹介
「非課税所得は、課税所得と何が違うの?」
「なぜ、課税される所得と課税されない所得があるの?」
「非課税所得にはどんなものがあるの?」
非課税所得について知りたい方の中には、このようなたくさんの疑問があるのではないでしょうか。
この記事では、非課税所得の概要や非課税所得にされる理由・趣旨、主な非課税所得の種類、課税所得と間違われやすい所得などについて紹介しています。
この記事を読むことで、非課税所得とはどのようなものか把握できるため、確定申告の際に悩むことが少なくなるでしょう。
課税所得と非課税所得の違いを理解できていない方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
非課税所得について
そもそも、所得や非課税所得がどのようなものかよくわからずに生活しているという方もいるでしょう。
非課税所得の種類について紹介する前に、所得と非課税所得がどのようなものかということについて解説していきます。
そもそも所得とは
収入から必要経費を差し引いたものを所得と言います。
例えば、商店を経営している方であれば売上が収入になり、そこから仕入れ代や店舗家賃などの必要経費を差し引いたものが所得です。
給与を受け取っている方であれば源泉徴収前の給与および賞与が収入で、そこから経費と見なされる給与所得控除を差し引いたものが所得になります。
なお、所得は所得税法で事業所得・給与所得・利子所得・配当所得・不動産所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類に分類されていますので、覚えておくと良いでしょう。
非課税所得とは
非課税所得とは、社会政策やその他の理由で所得税を課税されない所得のことです。所得税法や租税特別措置法などの法律で非課税所得に関する規定が設けられています。
非課税所得は所得税がかかりませんが、損失が生じたとしても損失はなかったものとされ、他の所得から差し引くことはできません。
非課税所得とされる理由や趣旨について
所得税はすべての所得に対して課税するのが基本です。しかし、所得税の中には非課税のものも存在します。なぜ、非課税所得があるのでしょうか。
ここからは、非課税所得とされる理由や趣旨について説明していきます。
社会政策的配慮
非課税所得が存在するのは、社会政策的配慮がなされているためです。
日本では税負担は公平であるべきという考えの基、経済能力に応じて税金を負担するようになっています。そのため、社会政策で与えられる健康保険、雇用保険からの給付金などの所得は非課税です。そのほか、生活するために必要な動産の譲渡も非課税になっています。
社会政策的配慮がなされて非課税となっている所得は、以下の通りです。
・衣服、家具など生活に必要な動産の譲渡で得た所得(ただし、1個または1組の価格が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨とうなどは除く。)
・損害保険金、損害賠償金、見舞金など(心身の損害によるものや突発的事故に起因するもの)
・遺族年金、増加恩給、傷病賜金など
・生活保護を目的とした保護金品や進学準備給付金など
出典:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁
二重課税の防止
相続や譲渡によって発生する所得には、相続税や譲渡税といった税金が課されることをご存じの方は多いでしょう。
相続税や贈与税が発生するのにもかかわらず、さらに所得税を課してしまうと、一つの課税原因に対して同種の課税が二回以上行われてしまうことになります。
二重課税になると納税者に多大な負担を強いてしまうことになり、税負担の公平性は維持されません。相続や譲渡によって生じた所得に関しては、二重課税を防止するために所得税は非課税とされています。
実質弁償的・必要経費的なもの
例えば、会社から支給される交通費や出張のために支給される出張旅費などは仕事のためにかかった費用を弁済するためのものです。労働に対して支払われるものではないため、非課税となります。
実質弁償的・必要経費的なものという理由から非課税所得になるものは、以下の通りです。
・給与所得者に支払われる出張のための旅費、転勤にかかる旅費など
・給与所得者に支払われる通勤手当(ただし、1カ月あたり15万円が限度。15万円を超えた場合は、超えた部分に課税される)
公益的な目的
広く社会に寄与したことで生じた所得(公益的な目的で得た所得)も非課税となります。公益的な目的という理由で非課税になる所得は、以下の通りです。
・学術、芸術奨励で附与される賞金など
・文化功労者年金
・ノーベル賞受賞者に贈られる賞金など
その他の所得について
「社会政策的配慮」「二重課税の防止」「実質弁償的・必要経費的なもの」「公益的な目的」のいずれの理由にも当てはまらないが非課税所得となっているものもあります。
上記の理由に該当しない非課税所得は、以下の通りです。
・オリンピックやパラリンピックの成績優秀者を表彰する目的で附与される賞金など
・宝くじの当せん金やスポーツ振興投票券(toto)の払戻金
・非課税口座内の少額上場株式(NISAなど)にかかる配当所得および譲渡所得など
主な非課税所得の種類
非課税所得の中は、所得税法および租税特別措置法に規定されているものもあります。ここからは、非課税所得のうち、所得税法および租税特別措置法で規定されている主な種類について見ていきましょう。
利子・配当所得関係
預貯金の利子や公債の利子などにかかる利子所得や株式などから受ける利益の余剰金や配当にかかる配当所得には、税金が課されるのが一般的です。しかし、利子所得や配当所得の一部には非課税のものもあります。
利子所得および配当所得で非課税となるものは、以下の通りです。
・障害者等の少額預金の利子所得(所得税法第10条)
・勤労者財産形成住宅貯蓄の利子所得(租税特別措置法第4条2)
・勤労者財産形成年金貯蓄の利子所得(租税特別措置法第4条3)
・納税準備預金の利子(租税特別措置法第5条)
・オープン型の証券投資信託の特別分配金(所得税法第9条11、所得税法施行令第27条に定めるもの)
・非課税口座内の少額上場株式等にかかる配当所得(租税特別措置法第9条8)
・未成年者口座内の少額上場株式等にかかる配当所得(租税特別措置法第9条9)
給与所得・公的年金関係
給与所得者が受け取る所得の中の一部や公的年金の一部にも、非課税とされているものがあります。給与所得および公的年金の非課税所得は以下の通りです。
・恩給法で定められた増加恩給(普通恩給を含む)および傷病賜金、業務上の傷害に基づく給付(所得税法第9条3、所得税法施行令第20条)
・転勤のための旅費、通勤手当、職務の性質上欠くことができない給付(所得税法9条4、5、6、所得税法施行令第20条、21条)
・在外手当(所得税法9条7、所得税法施行令第22条)
・外国政府や国際機関の職員が受け取る給与所得(所得税法第9条8、所得税法施行令第23条、24条)
・文化功労者年金法で定められた年金(所得税法第9条13)
・ストック・オプションによる経済的利益(所得税法施行令第29条の2)
譲渡(山林)所得関係
土地や建物、貴金属などの資産を譲渡したことにより生じた所得が譲渡所得です。通常、譲渡所得は譲渡した資産によって分離課税もしくは総合課税により課税されますが、非課税となるものも存在します。
非課税となる譲渡所得は以下の通りです。
・家具、什器、衣服など生活に必要な動産の譲渡によって生じた所得(所得税法第9条9、所得税法施行令第25条)
・強制換価手続き(競売や破産手続きなど)で資産を譲渡したことで生じた所得(所得税法第9条10、所得税法施行令第26条)
・非課税口座および未成年非課税口座(NISAやジュニアNISA)内の少額上場株式等にかかる譲渡所得(租税特別措置法第37条の14および14の2)
・国や地方自治体に財産を贈与または遺贈した場合に生じた譲渡所得(租税特別措置法第40条)
その他の所得関係
「利子・配当所得関係」「給与所得・公的年金関係」「譲渡(山林)所得関係」のいずれにも該当しない所得の中にも、非課税のものはあります。
その他の非課税所得は以下の通りです。
・慰謝料や損害賠償金、保険金など心身に与えられた損害や突発的な事故で資産に与えられた損害に基づいて取得するもの(所得税法第9条18、所得税法施行令第30条)
・学資金に充てるために給付された金品および扶養義務を果たすために給付された金品(所得税法第9条15、所得税法施行令第29条)
・オリンピックやパラリンピックで優秀な成績を納めた方に財団法人日本オリンピック委員会などから与えられる金品(所得税法第9条14)
・国や地方自治体が行う子育て助成サービスを利用するために与えられた金品(所得税法第9条16)
・相続や贈与などにより取得したもの(所得税法第9条17)
・皇室経済法に定められた内廷費や皇族費(所得税法第9条12)
・公職選挙法の適用を受ける選挙で、候補者が選挙活動に関して取得する金銭(所得税法第9条19)
・消費税率引上げに伴い低所得者に配慮するために、都道府県や市町村、特別区から給付される給付金(租税特別措置法第41条の8)
課税か非課税か間違いやすい所得
知識がない方にとって、課税所得と非課税所得を区別するのは難しいでしょう。課税所得であるにもかかわらず非課税所得だと間違われやすい所得、逆に非課税であるにもかかわらず課税所得だと間違われやすい所得というものも存在します。
ここからは、課税か非課税か間違いやすい所得について紹介していきますので参考にしてください。
失業保険
失業保険は、雇用保険法第12条で非課税の所得と規定されており、確定申告の必要性はありません。しかし、失業保険を受け取っている方でも確定申告をした方が良いケースというものがあります。
給与所得者は概算の所得税を毎月の給与から天引きし、年末調整で正しい所得税額を計算し過不足の調整を行います。年度途中で退職し年末調整を受けていない場合は、所得税の還付を受けられるケースがあるため確定申告した方が良いでしょう。
所得補償の保険金や新型コロナウイルス対策の給付金
国や地方自治体などから受け取る給付金は、非課税所得になるものと課税所得になるものがあります。
新型コロナウイルスの対策のための給付金を例に挙げると、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金や対象者1人当たり10万円が支給された特別定額給付金、新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金などは非課税です。
一方で事業復活支援金・持続化給付金(事業所得者向け・給与所得者向け・雑所得者向け)や雇用調整助成金、小学校休業等対応助成金・支援金などは課税対象となっています。
所得補償の保険金や新型コロナウイルス対策の給付金は、非常に複雑で分かりにくくなっていますので、確定申告前に課税対象か非課税か確認しなくてはいけないでしょう。
非課税所得は申告は不要
非課税所得は、所得金額に含める必要がないため確定申告は不要です。非課税の適用を受けるための確定申告も不要ですから、非課税所得を受け取った方は特に何かする必要はありません。
なお、非課税所得を得るためにかかった経費は、必要経費に含めることができないため注意しましょう。
非課税となる所得をきちんと覚えておこう
ここまで、非課税所得について紹介してきました。
所得にはさまざまな種類があり、課税か非課税か間違いやすいものも存在します。課税所得を非課税と勘違いしてしまうと、申告漏れで延滞税などのペナルティを科されてしまう恐れがあるため注意しなくてはいけません。
この記事を参考に、非課税となる所得をきちんと覚えるようにしましょう。
※初回公開日:2023年9月11日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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